アウトプットノート

物語、本、歌詞、表現を中心とした頭の中のメモノート。

児童文学『宝島』の読み比べ

ジョンバーニンガムの『なみにきをつけて、シャーリー』は、スティーブンソンの『宝島』の影響を強く受けているように思われます。日本でも実に色んな人の手によって訳されているようですが、今回は金原瑞人、海保眞夫、坂井晴彦、この三人の訳の違いに注目してみました。それぞれの解釈が露になっていてとても面白かったです。金原さんの訳が個人的に一番読みやすかった為、自分のレポートで使う参考文献は金原さんの『宝島』を選びました。

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(以下より金原訳を①、海保訳を②、坂井訳を③で記載します)



◇読者にむけられた謝辞の違い


①買おうかどうか迷っているきみに


②お買いになるのをためらっている読者に


③買おうか買うまいかと迷っている人に


ちなみにブログ主は、「ためらっている」という語句を入れた②の書きぶりに最も惹かれました。



◇アメリカの紳士ロイド・オズボーンへ向けて

①古い物語が好きなきみに語っているうちに、こんな物語ができてしまいました。


②なし


③きみの高尚な趣味に合わせて、この物語は書かれましたが、


②で訳されなかったのはどうしてでしょう。

③の「古い物語が好き」=「高尚な趣味」という訳者の解釈の色が強く出ているのも面白いですね。



◇最後に、冒頭部の違いについて

①地主のトリローニさんからも、医者のリブジー先生からも、ほかのみんなからも、書け書けとせっつかれてきた。あの宝島のことを最初から最後まで、こまかく書けというのだ。


②郷土のトリローニさん、医師のリブジー先生をはじめとする人々から、宝島をめぐるわたしたちの冒険を最初から終わりまでくわしく書いてはどうかとすすめられた。


③地主のトリローニさんや、医者のリブジー先生をはじめ、そのほかのかたがたから、あの宝島についての話を、はじめからおわりまで一つ残らず書きとめておくように、ただし、島の位置だけは、まだ掘り出してない宝っもあることだから、伏せておくようにといわれたので、


「せっつかれた」「すすめられた」「いわれた」ではニュアンスが大きく異なります。

本文比較はできませんでしたが、最初の数ページと冒頭だけでもこんなに違いが見られるんですね。

寄り道して力尽きる前に、レポートがんばってきます。

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