アウトプットノート

物語、本、歌詞、表現を中心とした頭の中のメモノート。

太陽を抱く月 全20話

「太陽を抱く月」

韓国での最高視聴率 42.2%

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〇フィクション時代劇

 2013年、このドラマが日本で放送された時「時代劇あんまり見ないけどハマった!」などの感想がSNS等で多く見られたようです。それもそのはず、時代劇の演出を担当するのは初めてだというキム監督の下「幅広い世代に見てもらえる時代劇」をコンセプトに撮影されたのです。そのため、固定の時代劇ファンだけでなく老若男女を魅了しました。

 これは、時代背景こそ朝鮮王朝ですが、登場人物はすべて架空の人物というフィクション時代劇です。巫女(みこ)と王の恋というありえない設定をありえそうに見せる演出も面白さの一つでした。

「太陽を抱く月」という神秘的なタイトル通り、映像も神秘的な美しさがあり、音楽も素晴らしい。経費緊縮の中で撮影したとは思えない豪華キャストによる迫力ある演技も物語を支えています。

 〇太陽を抱く月の冒頭

 ラストが爽快なものばかりを好んで観てきた私としては、中々受け入れられない部分もありました。でも翌々観直してみると、原作が骨太の小説であるだけあってとても文学チックに作られているドラマだということが分かります。辻褄が合わない部分や不条理さが残ったが故、私の中で記憶に残る作品となったのです。時代劇に詳しくない人が観たらまるで現代もののように楽しめる作品ですし、不条理さをきちんと描くという意味では、とても時代劇らしい作品と言えるかもしれません。

 物語はこのようなセリフから開かれます。「太古の昔 空には太陽が二つ 月も二つあったそうです。そのため昼は暑すぎて、夜は寒すぎました。天地の万物が混乱し、民が苦しみにあえいでいた時、不世出の英雄が現れ、太陽と月を一つずつ弓矢で射落とすと、ようやく平和が訪れたと言います。」最後まで観た後にもう一度この冒頭の言葉を考えると、とても切なくなる作品です。 

 日本ではまだまだ、時代劇は年配の人が好み、大河ドラマは歴史好きが好むといった印象がぬぐい切れないかもしれません。そんな人こそ韓国ドラマを始めとした海外のドラマから時代物に手を出してみてはいかがでしょうか。日本に入ってくるドラマや映画などは、海外の視聴者を意識して作られたドラマなので当然サービス精神に満ち溢れています。分かりやすく当時の時代を教えてくれています。

 「太陽を抱く月」の世界観は、国境や言語を越えてきっとあなたを魅了することでしょう。

 

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参考文献

・カンヒボン『韓流時代劇でたどる朝鮮王朝500年』(加藤文明社、2013年)