アウトプットノート

物語、本、歌詞、表現を中心とした頭の中のメモノート。

イ・ヨンエ『ヨンエの誓い』(NHK出版、2006)

 日本で一番有名な韓国時代劇と言っても過言ではない「チャングムの誓い」。放送から3年後に出版されたイ・ヨンエさんの本を紹介します。ヨンエさんは、チャングムを演じた大女優です。彼女のまっすぐな意見と数ページに一枚はさまれる写真に、目が釘付けになり一気に読み進めることができました。今回も3つの内容に絞って見ていきましょう。

 ①ヨンエさんのポリシー

 韓国ドラマは日本と違って、週に2回の放送枠があるので撮影スケジュールが大変。そして、視聴者の要望に合わせて脚本をすり合わせていくことも多いので、多い時には予定より数十話延長することもあるようです。これについて、ヨンエさんは疑問を持っておられます。演じる側も脚本家もスタッフたちも極限状態で作っていくのは本当に良いことなのかという心配をされていました。特に延長に関しては、それが理にかなった延長なのかをきちんと議論する必要があることをおっしゃっています。その逆の打ち切りもしかりです。

 ちなみにチャングムの誓いでは、ハン尚宮が人気で数十話彼女のシーンを伸ばした為に、ミン・ジョンホと王様とチャングムの三角関係は数話分でしか描けず、駆け足状態になったそうです。

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②監督独特のキャスティング

 ハン尚宮役のヤン・ミギョン氏は、実生活でも口数は多くない方で、演技にポリシーを持たれている方のようです。監督の人選は細かい適正まで見ておられるのですね。

 適正で一番驚いたのは、皇后役のパク・チョンスクさんはなんとドラマ初出演だったそうです。そうとは思えない貫禄でした。彼女は以前からMCとして活躍しており、チャングムの出演も真のMCのための通過点として出演し、語学や勉強に日々まい進する日々なのです。女優ではない人に重要な役を依頼し結果的に大成功でしたね。

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③日本観

 「両国の政治状況が難しい今こそ民間レベルの文化交流が大切」だとヨンエさんは言います。またガイド本などのドラマ関連書籍は韓国にはあまりないので、このように海外のドラマを記録として残してくれることに感謝されているようです。

 そして、ヨンエさんは「チャングムの誓い」が広く愛される理由を、「基本的なヒューマニズムがいかに大切かということを感じた。テーマやモチーフが明確だったことが、国境や言語や文化を越えて人気を経た理由だと思います。」とコメントしています。

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 これは私の意見ですが、音楽、映像、俳優陣等は、作品に内在するいくつかのテーマを支える周縁であって、中心となるテーマや目的が弱いといくら周縁を飾っても感動する作品にはならないということですね。

〇まとめ

 このように、ドラマの裏話やヨンエさんの考えを知ることができ内容はとても充実していたのですが、やはり訳本ですので文面=ヨンエさんの意図ではないでしょう。現地の雑誌やテレビを原語で見たり聞いたりできればどれほど良いだろうか…そう思いました。それでも、テレビでは中々聞けない面白いエピソードがありましたので、一度手に取って読んでいただきたい本ということには変わりありません。